原型師の手がかり


ある程度の数のソフト人形を目にすると、なんとなく造形上の特徴が見えてきて「これとこれは同じ人(原型師)が作ったのではないか?」と感じることがあります。



画像はいずれもブルマァク製で20cmほどのザビタン(アクマイザー3)。
向かって右はタカトクとの2社刻印になっています。

このように同じサイズで同じキャラクターを作り分けている場合はそれぞれの担当原型師の個性がわかりやすいのですが、こうしたケースは稀なものです。
では、サイズやキャラクターに左右されない共通の判断基準はないものでしょうか。



画像はブルマァク製30cmサイズのセブン、新マン、タロウです。
キャラクターによるデザインの差異は考えず体型だけに着目すると、三者三様の個性が読み取れないでしょうか。
言い換えると「成年男性の身体という共通のキャラクター」を個々の原型師がどのように理解・造形しているか、に注目することになります。
これは怪獣ソフトには当てはまりませんが、ヒーローや隊員の原型師についてはある程度の目安になりそうです。


同様に人間型に共通の「手の造形」に注目してみます。画像は20~30cmサイズのブルマァクソフト各種の手です。
人間の手は情報量の多い複雑な形状をしているので、それをどのように把握しているかを観察すると原型師の個性がある程度判別できそうです。



ただし、こうしたことを考える前提として注意すべき点があります。

ひとつは価格帯による造形の違いです。
例えばブルマァク(マルサン)では、それぞれの価格帯に応じて次のような造形上の特徴が見られるのです。


30cmの大サイズは等身が高く、比較的リアルなスタイルです。


22cmほどのスタンダードは大サイズより手足が短めでやや子供っぽい体型になっています。


38センチくらいの特大サイズになると頭部が大きく腕が太い独特な体型になります。
幼児にとって特大サイズは抱き人形のような存在なので、危険の無いように尖った部分や細い部分をなくそうとしているのかもしれません。
ただし1972年度以降は特大サイズも30cmサイズ同様のリアル体型に変わっていきます。

以上の3サイズの造形的な特徴はメーカーによる価格帯毎の商品仕様のようなものと考えられるため、原型師の個性とは区別する必要があります。


もうひとつの注意点は造形の伝染です。


画像はマルサン電動プラモ(ソフトビニール製復刻版)と無版権の駄玩具のゴメス。
一見して、その形状が極めてよく似ていることに気づきます。


この2体は造形的な特徴が共通していますが、同じ原型師が担当したとは考えにくいでしょう。
むしろマルサンゴメスの発売後に、それを手本として駄玩具が造形された可能性の方が高いと思われます。
このような「造形の伝染」とでも呼ぶべき現象は当時の玩具によく見られます。


画像のゴモラは大里玩具の指人形とブルマァクスタンダードサイズの比較。
頭頂が平面的になっている、上アゴ中央の大きな牙の省略、三本の指など、特徴は共通しています。


大里玩具の指人形のうちQ・マン・セブンの怪獣はそのほとんどがブルマァクのソフト人形と同じ特徴を持っており、先行のヒット商品をお手本に造形されただろうことがわかります。


この現象は同一メーカー内でも起こります。
画像はどちらもブルマァクのウルトラマンですが、スタンダードの特徴がそのままミニサイズに継承されているのがわかります。
特にミニサイズやミドルサイズでは先行の大きな商品を手本に造形される場合が多いようなので、造形の特徴をそのまま原型師の個性と判断するのは危険な場合があります。

現在は写真や映像を参考資料としてリアルな人形が造形されますが、1970年代ころの職人的な原型師はそうしたやり方はあまり得意でなかったそうです。
むしろ目の前に手本となる立体物があればそれをそっくりに再現する技術には長けていたそうで、こうした特性が伝染現象の背景にあったと思われます。(この説は1980年代のガレージキット関連の出版物で読んだ記憶があるのですが出典不明です。掲載誌をご存知の方はお知らせいただけると幸いです)



以上のような「価格帯による違い」「造形の伝染」に留意しながら個々のソフトの特徴を慎重に観察すれば、人間型の人形については、ある程度は原型師による分類が可能になりそうです。
関係者のインタビューによるとマルサン・ブルマァクでは主要な原型師が4人いたようですが、誰がどのソフトを担当していたのかある程度解明できるかもしれません。

充分な資料を持つコレクターの方が、こうした方面の研究をまとめてくれることを希望します。

ただし、これらはあくまで推理レベルの話であり想像の範疇を出ません
真実は直接の関係者にしかわからないというのは言うまでもないことで、再確認しておく必要があります。

ファンの立場では関係者への直接取材はほぼ不可能ですので、謎だからこそあれこれ想像する楽しみが生まれるのも事実ではありますが。
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[ 2010/01/27 02:16 ] ソフト人形 | TB(0) | CM(0)

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