セブンと責任


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シン・ウルトラマンのデザインが公表されました。
当時の本編映像に依拠するのでなくデザインを描かれた成田亨氏の意向を最大限尊重する
方針とのことで、カラータイマーが削除されています。
上の画像は成田氏が1982年に描かれたものです(怪獣と美術展2007での絵ハガキより)。

榛名湖畔に立つイメージ写真はあまりピンと来ませんでしたが、ひな型を様々な角度から
撮影した画像を見ると、ちゃんと「ウルトラマン」になっています。
頭部マスクは現存するCタイプでなく後年成田氏が作られたマスクをスキャン・縮小している
ようにも見えますが、どうなのでしょうか。

オリジナル・ウルトラマンとの差異としては、腰から背中へと続くラインが大きく変更
されたこと、ふともも前面のラインの切れ上りがより鋭角になったことが目につきます。


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腰から背中へのラインは、放送当時成田氏が描かれたイラストにシン~と同様になっている
例があります。画像はウルトラマンカード・32匹の怪獣(現代芸術社1966)より。

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ふともも前面のラインはもともとデザインの初稿段階からすねのラインと呼応するように
切れ上がっており、82年のイラストや画像のウルトラマンカードでもその傾向が見られます。

こうしたことから、シン~での変更点は成田氏のイメージにより近づき、一方で商業的に
要求されるだろう「初代ウルトラマンとの明確な差異」という要素を同時に満たすことを
意図しているのではないかと想像します。
もっとも成田氏のイラストではウルトラマンのライン表現は必ずしも一定でないので、
今回のライン取りこそが成田氏のイメージなのだと言い切るのは難しいかもしれません。


成田氏と円谷プロの関係は長年こじれた状態でした。
今回、庵野氏という「外圧」によって両者の関係が修復されたのは喜ばしいと思います。
また「シン・ウルトラマン」は東宝映画として製作されており、円谷プロと東宝の関係も
正常化したのでしょう。

かつての円谷プロは成田氏の功績を意図的に貶めようとしたり、親会社として様々に
世話になった東宝との関係を自ら切り捨てたりしていました。
その一方限られた経営陣は俗な享楽に会社の資金を流用していたようで、同族経営の
中小企業に典型的な腐敗があったらしいことが、元社長の著書で語られています。

今回の和解は、経過した長い時間とそれに伴う当事者の世代交代も背景にあるものと
考えますが、いずれにしても良い変化だと思います。



1980年代後期、成田氏が夏に渋谷で個展を開催されていたころ、その会場でお話させて
いただいたことがあります。

その時点では画集や雑誌で語られていなかった様々な疑問をうかがったのですが、最も
印象に残ったのはウルトラセブンのデザインの詳細についてでした。
当時、ウルトラマンのデザイン過程についてはすでに情報公開されていましたがセブンに
ついてはそうした記事を読んだことがなく、ご本人に直接質問させていただいたのです。
成田氏は何者でもない学生の自分に、率直かつ気さくに答えて下さいました。
その時うかがったのは以下のような内容だったと記憶しています。

ウルトラマンでは古谷敏という演者を得てデザインに集中できたが、セブンでは古谷氏の
起用は叶わなかった。配役担当がアクションが得意な俳優を連れてきたが、動きは良くても
体形が大顔・短足気味なので、撮影用スーツを着せるとさらにプロポーションが悪くなり、
ヒーローらしからぬものになってしまう。
何度も役者を変更するよう要請したがまったく対応がなく、他の仕事も進めねばならない
のでやむなくそのままヒーローデザインをやらざるを得なかった。
そのためセブンのデザインは、まずいプロポーションをいかに救うかしか考えなかった。
重心をすべて上部に集中させ、胸から下はたてのラインで分割してスマートさを出した。
色は「縮む色」である青にするつもりだった。

このお話は、衝撃でした。
演者の体形という現実の制約に、作品の顔である主役のデザインそのものが犠牲にされた
とも解釈できます。

後年成田氏は自身のヒーローデザインの中でセブンはあまり気に入っていないと述べて
おられますが、こうした事情を考えると無理からぬことのようにも思えます。
セブン頭部はアイスラッガーを除けば人間に鎧を被せたままの形状とも取れるし、彫刻家
たる成田氏らしい「かたちの飛躍」には乏しいのかもしれません。

とはいえ、そんな「気乗りしない」なかで生み出されたウルトラセブンがウルトラマンと
並び立つ不滅のヒーローになってしまうあたりに、当時の成田氏の才能の巨大さが端的に
表れているともいえるでしょうか。


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この画像は1993年のNHK土曜ドラマ「私が愛したウルトラセブン」より、白人青年が
セブンスーツを着ている場面です。
小顔で足の長い人がセブンになると、むしろ間延びした印象になってしまっています。

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セブンのデザインは、あくまで頭身の低さをカバーしてこそ効果を発揮することがよく
わかります。
また第14・15話では後に帰ってきたウルトラマンを演じる菊池英一氏がセブンスーツを
着ており、いつもの上西セブンよりスマートに感じますが、それだけでなく帰ってきた~
よりも良いプロポーションに見えます。
これもセブンのデザイン自体がそうした効果を生んでいるのだと思われます。

成田氏は「役者の体形を無視して理想的なプロポーションの絵を描けば、スタッフはだまされる
かもしれないが、実際に映像になった時に困るのは特撮美術監督たる自分だ」という意味の
発言をされていました。
それでも気恥ずかしくて、セブンのデザイン画は直立でなくポーズを付けて描いたそうです。

成田氏のセブン途中での降板後、怪獣デザインを引き継いだ池谷仙克氏が初デザインのダリーを
造形の高山良策氏に見せた時、中の人間のバランスが狂っている(からこの絵の通りには
作れない)という趣旨の指摘を受けたそうです。
成田デザイン・高山造形の怪獣たちの魅力の根源には、こうしたリアルな現実認識と社会人
としての責任感もあったのかもしれません。



以下は蛇足ながら…

セブンのデザインを勝手に流用・改変したタロウは演者のプロポーションに恵まれて
スマートでしたが、放送当時からいまひとつ好きになれませんでした。
これは「重心の上部への集中」を踏襲したレオについても同様で、両者にはデザインの
充実感みたいなものが希薄な印象がありました。
セブンのデザイン手法を、無理解なまま模倣していたことがその原因でしょうか。


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[ 2020/01/06 20:33 ] 暫定 | TB(-) | CM(4)

成田さんの過去イラストの解析、ありがたく又、納得です。
セブンデザインのいきさつも今や有名ですが、直接お聞きになったとは 本当にすごいですね。。

もう目が馴れちゃった下半身スッキリのレオなどには、銀ライン入りのNGスーツもありましたが、
あの辺は「上方に大きく広がった頭部」でギリギリバランスを保っているのかもですね。(いずれにしろ成田デザインの改変には違いありませんが…)
[ 2020/01/06 23:23 ] [ 編集 ]

自分はQ・マン・セブンの本放送には間に合わなかったし、子供の頃はデザイン
の裏事情など知る由もありません。
それでも幼稚園の時に始まった「帰ってきた~」には「前のウルトラマンの方が
断然かっこいいじゃん」と思ったし、小学生で接したエース以降は「年々ひどく
なるな…」と感じていました。

理屈はわからなくても、映像自体から感覚的に「セブンまでと帰ってきた以降は
まったく違う」と感じていて、このあたりはもう少し深掘りして「怪獣ブーム
雑感」の項目に書いておきたいと考えている、のですが…(^^;
[ 2020/01/07 10:30 ] [ 編集 ]

なるほど。

勉強になります。(><)
[ 2020/01/07 22:56 ] [ 編集 ]

シン~についてはただの想像ですけどね(^^;
[ 2020/01/08 10:03 ] [ 編集 ]

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