未発売のジョイントモデル


日本プラモデル50年史(文藝春秋/2008)は日本のプラモデルの歴史を詳細かつ包括的に記述した唯一の書籍です。
付属のCD-ROMには「日本模型新聞」に記載のあるプラモデルのデータが収録されています。
ジョイントモデル関連には次のような興味深いデータがあります。

 ジョイントモデル スカイゼル 1976年8月予定 500円
 ジョイントモデル グランゼル 1976年8月予定 500円
 
 ミニ・ジョイントモデル 1976年7~8月予定 各100円
   カゲスター
   ベルスター
   ガイキング
   スカイゼル
   グランゼル
   コンバトラーV

 ジョイントモデル ボルテスV 1977年8月予定 600円


キョーダインはロボットとはいえ特撮ヒーローですから、そのジョイントモデルが予定されていたことに驚かされます。
上の画像はキャラ通(文化産業新聞社)と当時のカタログに掲載されたマスコットの試作品ですが、よく見るとバイクと人形のスケールが合っていません。
同時期のガイキングやコンバトラーではジョイントモデルの試作品にジョイントパーツが使用されていないことを考えると、これらがジョイントモデルの試作だった可能性があります。

「ミニ・ジョイントモデル」は「ジョイントパズル」の仮名称と考えられ、予定ラインナップにベルスターとグランゼルがあったのがわかります。
ジョイントボルテスVは前年のコンバトラーからの流れで予定されていたと思われますが、同じ価格で合体ギミックを強化した単品プラモデルに変更されています。


このCD-ROMには他にもさまざまな発売予定情報が収録されているので、気になるものを拾い出してみます。

1976年度
カゲローカー(300円・ゼンマイ)
大空魔竜(700円・ゼンマイ)
マシンハヤブサ(1000円・モーター エンジン取替えで速度変更)
ビッグギャリー(1000円・ゼンマイ)
ミニバリタンク(300円・ゼンマイ)
ガイキング(ソリッド)(500円 77年1月予定)
 
バリタンクやカゲローカーは当時の知名度を考えると発売されていてしかるべきと思いますが、76年度はヒーロー・メカともに爆発的に数が増えているので対処し切れていないような印象もあります。
ガイキング・ソリッドというのはどのようなものか不明。


1977年度
ボルテスV(1300円・モーター歩行 8月予定)
サテライザー(700円 8月予定・ダンガードに変形)
シグコンタンク(1000円・モーター 8月予定)
ジャックタンク(600円・ゼンマイ)
スカイエース(600円・ゼンマイ)
スカイエース(1000円・モーター 9月予定)
ジェッターマルス(700円・ゼンマイ歩行 8月予定)

77年は前年より商品数が減っていますが、モーター版のボルテスやスカイエースなどの企画から、本来は前年並みの展開を予定していたことがうかがえます。


これは当時のカタログのサテライザー発売予告。製品としての変形ギミックには触れられていません。
この時点で予価1000円になっていますが発売には至りませんでした。


こちらはキャラ通に掲載されたジェッターマルス。これがゼンマイ歩行版の試作品なのかもしれません。
こうした試作や商品見本の写真が現存しているのなら、ぜひ書籍などの形でまとめてほしいと思います。



以下、78年度以降で目に付く未発売品を挙げておきます。

エメラリーダ号(5000円 78年8月予定)
ドルギラン(700円 82年8月予定)
ギャバン(700円 82年9月予定)
ダンバイン(10000円・バブルキャストモデル 83年12月予定)
バイファム(10000円・バブルキャストモデル 83年12月予定)
シャイダー(300円・イロプラ 84年6月予定)
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[ 2010/01/31 17:12 ] ジョイントモデル | TB(0) | CM(2)

原型師の手がかり


ある程度の数のソフト人形を目にすると、なんとなく造形上の特徴が見えてきて「これとこれは同じ人(原型師)が作ったのではないか?」と感じることがあります。



画像はいずれもブルマァク製で20cmほどのザビタン(アクマイザー3)。
向かって右はタカトクとの2社刻印になっています。

このように同じサイズで同じキャラクターを作り分けている場合はそれぞれの担当原型師の個性がわかりやすいのですが、こうしたケースは稀なものです。
では、サイズやキャラクターに左右されない共通の判断基準はないものでしょうか。



画像はブルマァク製30cmサイズのセブン、新マン、タロウです。
キャラクターによるデザインの差異は考えず体型だけに着目すると、三者三様の個性が読み取れないでしょうか。
言い換えると「成年男性の身体という共通のキャラクター」を個々の原型師がどのように理解・造形しているか、に注目することになります。
これは怪獣ソフトには当てはまりませんが、ヒーローや隊員の原型師についてはある程度の目安になりそうです。


同様に人間型に共通の「手の造形」に注目してみます。画像は20~30cmサイズのブルマァクソフト各種の手です。
人間の手は情報量の多い複雑な形状をしているので、それをどのように把握しているかを観察すると原型師の個性がある程度判別できそうです。



ただし、こうしたことを考える前提として注意すべき点があります。

ひとつは価格帯による造形の違いです。
例えばブルマァク(マルサン)では、それぞれの価格帯に応じて次のような造形上の特徴が見られるのです。


30cmの大サイズは等身が高く、比較的リアルなスタイルです。


22cmほどのスタンダードは大サイズより手足が短めでやや子供っぽい体型になっています。


38センチくらいの特大サイズになると頭部が大きく腕が太い独特な体型になります。
幼児にとって特大サイズは抱き人形のような存在なので、危険の無いように尖った部分や細い部分をなくそうとしているのかもしれません。
ただし1972年度以降は特大サイズも30cmサイズ同様のリアル体型に変わっていきます。

以上の3サイズの造形的な特徴はメーカーによる価格帯毎の商品仕様のようなものと考えられるため、原型師の個性とは区別する必要があります。


もうひとつの注意点は造形の伝染です。


画像はマルサン電動プラモ(ソフトビニール製復刻版)と無版権の駄玩具のゴメス。
一見して、その形状が極めてよく似ていることに気づきます。


この2体は造形的な特徴が共通していますが、同じ原型師が担当したとは考えにくいでしょう。
むしろマルサンゴメスの発売後に、それを手本として駄玩具が造形された可能性の方が高いと思われます。
このような「造形の伝染」とでも呼ぶべき現象は当時の玩具によく見られます。


画像のゴモラは大里玩具の指人形とブルマァクスタンダードサイズの比較。
頭頂が平面的になっている、上アゴ中央の大きな牙の省略、三本の指など、特徴は共通しています。


大里玩具の指人形のうちQ・マン・セブンの怪獣はそのほとんどがブルマァクのソフト人形と同じ特徴を持っており、先行のヒット商品をお手本に造形されただろうことがわかります。


この現象は同一メーカー内でも起こります。
画像はどちらもブルマァクのウルトラマンですが、スタンダードの特徴がそのままミニサイズに継承されているのがわかります。
特にミニサイズやミドルサイズでは先行の大きな商品を手本に造形される場合が多いようなので、造形の特徴をそのまま原型師の個性と判断するのは危険な場合があります。

現在は写真や映像を参考資料としてリアルな人形が造形されますが、1970年代ころの職人的な原型師はそうしたやり方はあまり得意でなかったそうです。
むしろ目の前に手本となる立体物があればそれをそっくりに再現する技術には長けていたそうで、こうした特性が伝染現象の背景にあったと思われます。(この説は1980年代のガレージキット関連の出版物で読んだ記憶があるのですが出典不明です。掲載誌をご存知の方はお知らせいただけると幸いです)



以上のような「価格帯による違い」「造形の伝染」に留意しながら個々のソフトの特徴を慎重に観察すれば、人間型の人形については、ある程度は原型師による分類が可能になりそうです。
関係者のインタビューによるとマルサン・ブルマァクでは主要な原型師が4人いたようですが、誰がどのソフトを担当していたのかある程度解明できるかもしれません。

充分な資料を持つコレクターの方が、こうした方面の研究をまとめてくれることを希望します。

ただし、これらはあくまで推理レベルの話であり想像の範疇を出ません
真実は直接の関係者にしかわからないというのは言うまでもないことで、再確認しておく必要があります。

ファンの立場では関係者への直接取材はほぼ不可能ですので、謎だからこそあれこれ想像する楽しみが生まれるのも事実ではありますが。
[ 2010/01/27 02:16 ] ソフト人形 | TB(0) | CM(0)

セブンと新マン


ブルマァク製30cmサイズでマスクの取れるウルトラセブンと帰ってきたウルトラマン。
どちらも1972年度に発売されました。
前回の記事で取り上げたタロウ同様、この新マンの造形もセブンに酷似しています。




ボディや手足の比較。
関節部のしわは完全に一致しています。


タロウでは差異の見られる内腿の曲面もよく似ており、新マンの方がセブンとの「そっくり度」は高いようです。
この2体はどのように作られたのでしょうか。



ブルマァクは1971年度までは30cmサイズでマスクの取れない人形を発売していました。
セブンと新マンは1972年度にマスクの取れる仕様でリニューアルされたことになります。


マスクの取れるソフト人形の元祖は中嶋製作所のタイガーマスクです(注)。
ただしウルトラ怪獣とタイガーマスクがソフト人形の人気を二分していた1970年度まではこの仕様を採用する追随商品は現れていません。
1971年度になってバンダイが仮面ライダーでマスクの取れる人形を発売し、ライダー人気の高まりとともにヒット商品になります。(画像のマフラーは代用品です)


ブルマァクはこの流れを受けて、71年12月新番組のミラーマンからマスクの取れる仕様を採用します。


バンダイも同時期のシルバー仮面や月光仮面をマスクの取れる人形にしています。
タイガーマスクや仮面ライダーはキャラクターの設定上マスクが取れる必然性がありましたが、このころから「マスク取れ」は設定に関係なくヒーロー人形の商品仕様のようになっていきます。



こうした傾向は1976年ころまで続きますが、特に72年度は変身ヒーローの乱立とともにマスク取れ人形が大量に発売されています。


マスク取れのセブンと新マンの発売にはこうした背景がありました。
セブンと新マンの場合、リニューアルという性質上商品化はほぼ同時に決定されて原型師への発注も同時期だった可能性が考えられます。
ほぼ同時に同サイズの2体のヒーローを発注された原型師は、効率を考えてワックス段階で改造しての作り分けを前提に共通の原型を作ったのではないでしょうか。

前回記事の工程2で制作する石膏製のメス型は通常はすぐ廃棄されてしまうようですが、2体同時制作を前提としたためにすぐには壊されることなく、2回使用されたのではないかと思われます。


もし石膏製のメス型がその後も保存されていれば、翌1973年のタロウ制作時にも再利用されたのかもしれませんが、真相はわかりません。
いずれにせよこれら3体は造形的に共通の素体を持つ兄弟と言えると思います。



蛇足ながらこうした例は他にもあります。


画像はバンダイ製・キングサイズという大型人形の仮面ライダー、コブラ男、ヤモゲラス。
(マフラーは代用品、ヤモゲラス頭部は破損しています)
ライダーと怪人の脚部は同じ形状であり、しわなどもほぼ一致しています。


ただしライダーのみ側面に縫製モールドがあり、全体に彫刻がややシャープになっています。
また右足首周辺のしわにのみ差異が見られることから、おそらく最初にライダーを造形し、その石膏メス型からワックス原型を複製して一部手直しして怪人用の脚部にしたのではないかと考えられます。
画像のヤモゲラスは右脚のみ誤ってライダーの金型から成型されていますが、形状自体はまったく同じなので違和感はありません。

なお、これらの仮面ライダーキングサイズは造形的な特徴からマスク取れセブンと同じ原型師の担当のようにも思えますが……はたして?


注:より正確にはマルザンのウルトラセブンペンダントという先例があります。
[ 2010/01/10 03:29 ] ソフト人形 | TB(0) | CM(0)

トレイの形状 補足

初期ジョイントモデルのトレイの形状変化について補足しておきます。
前回の記事のあと出版物やウェブの画像を再確認したところ、ゲッターライガーと初版のグレンダイザーも一括収納タイプのトレイが使用されていたのがわかりました。

これでゲッタードラゴン・ゲッターライガー・グレンダイザーはいずれも個別型・一括型の2種のトレイが使用されていたことになり、再版が一括型になっているライディーンも同様のパターンだった可能性が高くなりました。
(追記:ライディーン初版の一括型トレイも確認されました)


ここで問題になるのがグレンダイザーです。
前回の記事では仮説として「個別型トレイを改修して一括型にした」と考えましたが、再版のグレンダイザーは個別型トレイにもどっているのでこの説に反しています。


そこで初版と再版のトレイをよく観察すると、腰のパーツ上部の突起の幅やパンチパーツとジョイントパーツ位置の間隔などが異なっています。
どうやらグレンダイザーは再版時にあらたにトレイを作り直しているようで、だとすれば仮説とは矛盾しないことになります。


なお、確認された一括型トレイにはすべてギザ付きの改良型ハトメジョイントが同梱されていました。
ゲッタードラゴンは水色、ゲッターライガーとグレンダイザーは黒のジョイントです。(追記:ライディーンも黒)
差し込み部に細かなギザを付ける改良は、タカラの変身サイボーグ1号で実施された手法と同じです。


ジョイント改良の実施は、それだけジョイントモデルが売れていたことを示している面がありそうです。

発売当時初期型ジョイントのゲッタードラゴンを購入しましたが、ジョイントパーツをプラパーツに差し込むと抜けなくなってしまうことがよくありました。
子供の力では取れないのでペンチを使用したり、無理に引っ張ってハトメ部分が壊れたりした記憶があります。

そうした声はバンダイ模型にも届いていたでしょうが、モデルボーグやDXモデルのように短期で終了してしまうシリーズならわざわざパーツの改良など出来なかったはずです。


ジョイントモデルは1975-77年度の3年にわたって展開された人気シリーズです。
よく売れているからこそパーツの改良が実施されたし、トレイが一括収納型に変更されたのは梱包時の能率アップのためだったのかもしれません。
[ 2010/01/09 23:56 ] ジョイントモデル | TB(0) | CM(0)

セブンとタロウ


ブルマァク製30cmサイズのウルトラセブンとウルトラマンタロウ。
セブンはマスクの取れる仕様で1972年、タロウは73年の発売。この2体を並べると気付くことがあります。



タロウはセブンに似たデザインですが、これらは人形としての造形もよく似ているのです。



ボディや手足の比較。
デザインの差異は別として、手袋の縫製ディテールやブーツの長さ以外はほとんど同じ。



さらに詳しく見てみます。
画像ではわかりにくいですが関節部はしわの本数や角度、深さまで完全に一致しています。
内腿や背中の曲面ラインにわずかな差異が見られるものの、表面ディテール以外の「素体」というべき部分のほとんどがそっくりなのです。


同サイズで同じ原型師が担当したと思われる人形は他にもあり、造形的な特徴は共通しています。
ただし関節のしわ一本まで完全に一致するようなことはないので、セブンとタロウは特殊なケースと思われます。
(画像の隊員ヘルメットは復刻版を使用しています)



両者の頭部を観察すると顔つきもよく似ていることに気付きます。


画像を合成してみると口の形状、目の周囲のへこみの下部はほぼ一致しました。
右目の放射状ディテールもかなり重なっています。

こうしたことからタロウの原型はセブンを改造して作られた物と予想されるのですが、素体部分は共通で表面ディテールのみ変えるということは可能なのでしょうか。


この疑問を考えるために、ソフト人形の製造工程をおおまかに確認しておきます。

 1. 原型師が粘土などで原型を作る(粘土原型
 2. 1を石膏で型取りして石膏製のメス型を作る
   この段階で粘土原型は失われる
 3. 2にロウ(ワックス)を流し込んで粘土原型の複製を作る(ワックス原型
   ワックス原型は商品のパーツ分割に合わせて分解され、はめ込み部分が造形される   
 4. 3にメッキをかける。厚く積層したメッキ自体が金型(元型)となる
   この時点でワックス原型は失われる
 5. 4にソフトビニールを流し込んで6の工程で必要な数のパーツを生産する(元型抜き
   ソフトビニールは成型時に収縮する性質があるため、成型品は1や3より少し小さくなる
 6. 5にメッキをかけて量産用の金型を作る(量産型
 7. 6にソフトビニールを流し込んで量産品を作る
   この時点で再び収縮が起こるため、量産品は元型抜きよりさらに小さくなる 

 
上記のどの段階で手を加えるとセブンとタロウのような状態になるか考えてみます。

① 2の石膏製のメス型が残っていれば、そこからワックス原型を作ってワックス段階で改造することが出来ま   す。この場合量産品は同じ大きさになります。
  (石膏型は通常は廃棄されてしまうようなので、保存されていたかどうかは不明)

② 4以降の工程ではソフトビニールの成型品に手を加えることになりますが、硬い表面を削ってデザインの差異  や縫製の繊細なディテールを加えたとは考えにくいです。
  ただし一度型取りしてワックスに置き換えればそうした造形は容易になりますが、その場合工程が増えた分だ  け量産品のサイズは小さくなります。
  セブンとタロウの足裏を合わせてみるとタロウの方がやや小さいので、5の元型抜きをワックスに置き換えて改  造した可能性が考えられます。
  (これは両者が量産品という前提。タロウは大きさの異なる元型抜きがB-CLUBから再版されているので当時  品が量産型というのは確定していますが、セブンの当時品が元型抜きという可能性は残っています。その場   合はこの説は成立しません)

上記の①と②、どちらも可能性はありますが決定的ではありません。
当時品のセブンが元型抜き・量産品のどちらなのかが確認出来れば判断できるのですが…
 

ここまで考えた段階で、同じサイズでマスクの取れる帰ってきたウルトラマン(マスク無しのジャンク品)を調べたところ、この人形も素体部分がほぼ共通であることが判明してしまいました。


これは一体どう考えるべきでしょうか?

(続きます)
[ 2010/01/03 20:58 ] ソフト人形 | TB(0) | CM(0)